夢のごとき鈴鹿・元越谷源流彷徨2007年05月21日

 5/20 午前4時過ぎ起床。やや小寒い朝である。今年初めての沢登りである。沢初めは鈴鹿近江側にある元越谷。
 午前8時20分駐車地点を出発。少し前に三河ナンバーのパーティーが出発していった。周囲にはことの他藤の花が多い。正岡子規の「藤の花房短ければ畳の上にとどかざりけり」という短歌を思う。鈴鹿スカイラインからずうっと見てきた藤の花の多さに圧倒される。
 入渓地点は地形変更があったらしく埋められていた。全くの初心者のFさんは先ほどからもう今までの山行との違いに困惑気味であるが心なしか嬉しそうでもある。今まで避けてきた水の中に足を踏み込むこと自体が異次元の体験である。
 堰堤を越えたり、滝をへつったり、高巻きして懸垂下降を経験したりして進む。LのW君は下半身を水没させてやる気満々である。Fさんも下半身を濡らして沢登りの醍醐味を味わう。
 核心の18m大滝に遭遇。やおらカメラを出して数枚のショットを撮影。「ええっ、あの滝を登るんですか」とFさんは素っ頓狂な声をあげた。「いやいや右を巻くんですよ」とW君。ここではロープで確保。中々足取りは確りしている。
 滝を越す。Fさんはさっき教えた自己確保(セルフビレイ)の体制で準備が整うのを待っている。飲み込みは早そうである。滝の落ち口に立つとあとは小さな滝や釜の連続する楽しい渓谷遡行が味わえる。小技を使いながらの遡行である。12時過ぎ、左股をを分ける。水量が減ったせいで谷は平凡になる。傾斜も緩くなる。仏谷の分岐までがやや冗長なほど長く感じられた。 仏谷の別れで右に行く。すぐ先でゴルジュとなるため左岸を大きく高巻く。谷に戻ったがもう渓相は平凡になってしまった。しかし平流でりながらも樹相は素晴らしかった。炭焼き窯跡もあちこちに見られた。カメラを構えるには低い雲のためか暗いので不向きだったがやや興奮気味になりながら古い道跡を探しながら先に進んだ。
 源流に行けば行くほど雰囲気はよくなり、庭園の趣があった。左は仏谷峠と見られる道もあったが高円山を目指した我々は直進した。本流も支流も同格に見えて迷いそうであった。目の前の鞍部らしい高みを目指して土の滑りやすい斜面を駆け上がるとよく踏まれた道に出会った。
 道は楽なものである。ハイウエイと同じである。少しばかり歩くとひょっこり車道に出た。登山口から宮指呂岳への道はこことつながっていたのである。車道を登ると親切にも高円山へのプレートがぶら下がっていた。
 高円山へはよく踏まれた道が続いた。道々出会う小さな花はイワカガミである。山頂に近づくにつれて群落に近い繁殖力を見せる。植物は人間から遠ざかるほどよく育つのであろう。
 小さなキレットなどを通過して山頂へは15時であった。実に7時間が経過していた。山頂は南や西に切開かれていた。シャクナゲがまだツボミも含めて多く群落といっていいほどである。 
 小寒いので長々と滞在は出来なかった。15時20分下山。帰路は林道をすたすた歩いた。横谷山の登山口を通過してどんどん下ると見慣れた橋についた。これで一周したことになる。車止めまではゆっくり歩いた。17時。
 かもしか荘で入浴を楽しんだ。汗を流すというより冷えたからだを温めた。風呂からでてもまだ明るい。この先の2ヶ月間沢登りが楽しめる。いい沢初めであった。