春の鳶 寄りわかれては 高みつつ 飯田龍太2021年03月06日

 鳶が二羽、春の空に舞う。寄り合ったかと見ると、たちまち別れ、次第に空の高みへと、せり上がってゆく。まるで何かに押しあげられるように上昇気流に乗って。春を迎えて求愛の飛翔だろうか。
 この句の中七以下を細かく区切ってみると、「寄り」「わかれては」「高み」「つつ」のようになるが、いずれも鳶の刻々の動きを言葉で具象化してゆく表現。作者がいかに対象の動きを細かく文節化する才能に恵まれているかが判る。
 そして、その細分化された対象の動きを一気に力強い詠み方で合体させるとき、句全体はきびきびした律動を与えられる。昭和28年刊『百戸の谿』所収。

飯田龍太は2007年二月下旬に亡くなった。飯田龍太は飯田蛇笏の4男として誕生。「雲母」主宰を勤めるが、もう十数年も前に自分の結社も解散した。潔いと言えよう。日本芸術院会員。
以上
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から転載。
・・・まるで動画を見ているようなゆるやかな動きのある俳句でした。