山名と点名の違い2019年04月11日

 5月掲載予定の鹿島槍ヶ岳の原稿を書き終えた。
 北アルプスには槍ヶ岳が3ヶ所もある。涸沢槍も入れると4か所か。それで点名もWEBで調べてみた。点名は三角点測量のデータを集めたいわば戸籍簿のような書類である。昔は会社の休みをとって国土地理院中部地方測量部へ行って許可を得て調査したものだった。点の記の写しは有料で取得したが今はWEBから無料で調べることができるから便利だ。
 鹿島槍は鹿島入だった。入(いり)は奥の意味がある。矢作川源流の大川入山、木曽川支流の大棚入山がある。大平峠の飯田市側に廃村になった松川入があった。気を付けておればあちこちに見いだせる。山民は単に鹿島の奥とだけ説明したのだろう。山名は昔からあるのは鶴ヶ岳、背比べ岳、鹿島大岳があった。
 鹿島槍ヶ岳と命名したのはいつだったのか。明治31年の北安曇郡の地図には印刷されていたらしい。
 槍ヶ岳の点名は何と鎗ヶ岳と国字が使ってあった。爺ヶ岳は祖父岳、五龍岳は平川入だった。平川は白岳に突き上げる川名である。八方尾根と遠見尾根の間の沢である。 
 意外なのは白馬三山の鑓ヶ岳であった。何と本家と同じ鎗ヶ岳になっていた。普通は同じだとⅠ、Ⅱと冠するものだが、まったく同じだった。例えば愛知県の鷹ノ巣山は段戸山Ⅰ、寒狭山は段戸山Ⅱ、風切山は日吉村1、船着山は日吉村2という具合だ。
 そこで地形図には槍ヶ岳が使えず、鑓ヶ岳の文字を使ったのだろう。それでも読み方は同じなので白馬鑓とした。鹿島鎗も当用漢字の槍の文字にした。多分ある時期から当用漢字への切り替えが行われたと見た。
 国字の鎗は岐阜県の鎗ヶ先の例がある。点名も同じで一致する。なぜか国字のままである。