戒名は真砂女でよろし紫木蓮 真砂女2016年08月30日

 俳人・鈴木真砂女(1906~2003)の句。波乱の人生を歩んだ女性。過去に思いを引かれずに生きるすべを俳句の切れに学んだか。潔い俳句にファンが多い。師は久保田万太郎というが真砂女の句にもその影響はある。何気ない言葉をちょいと切り取って一句に仕立てる。
 表題の句は最近になって相続一般の相談に乗っていて思いついた。戒名料の話が出て死ぬのも大変だと思った。ネットでググると相場は50万円であるが最高は150万円である。お通夜と告別式のお布施で約20万円から30万円、その他もろもろでおよそ200万円は覚悟することになる。
 作者は戒名は要らないと謳う。俳人の真砂女で死ぬというのである。
以下に掲げる俳句にも女ひとり、過去の恋多き人生をこやしとして、料理と俳句に生きる覚悟が伺われる。中には万太郎の添削が入っているな、と思わせる作家的な斡旋の巧さがある。

瓜揉んでさしていのちの惜しからず

死なうかと囁かれしは蛍の夜

夏帯やおのれ抑ふることに馴れ

かのことは夢幻か秋の蝶

泣きし過去鈴虫飼ひて泣かぬ今

人と遂に死ねずじまひや木の葉髪

羅(うすもの)や人悲します恋をして

水打ってそれからおかみの貌になる

死ぬことを忘れておりし心太

浴衣のまま行方知れずとなるもよし

菜の花や今日を粧ふ縞を着て

神仏に頼らず生きて夏痩せて

秋刀魚焼く煙りの中の割烹着

桃林の落花の果てに消えしかな

初凪やもののこほらぬ国に住み

火祭やまだ暮れきれぬ杉木立

舞い舞いて波濤の泡のきらめけり

大輪の菊の首の座刎ねたしや

降る雪やここに酒売る灯をかかげ

揚物をからりと揚げて大暑なり

目刺し焼くここ東京のド真中

ゆく秋や小店はおのが正念場

東京をふるさととして菊膾

今生のいまが倖せ衣被(きぬかつぎ)

かくれ喪にあやめは花を落しけり

夏帯に泣かぬ女となりて老ゆ

とほのくは愛のみならず夕蛍

かのことは夢まぼろしか秋の蝶

蛍火や女の道をふみはずし

夏帯やー途といふは美しく

夏帯や運切りひらき切りひらき

死にし人別れし人や遠花火

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