島津亜矢・豊橋コンサートに行く2011年07月31日

今日は島津亜矢の豊橋コンサートだった。外はクマゼミが鳴いて喧しい。アイポッドのイヤホンもかき消されるほど。むし暑い最中であるが大勢の聴衆が詰め掛けて会場は熱気がムンムン。Pには観光バスも数台あり、このせいか会場は満席だった。それでも特等席のような席が数席空いていたのは惜しい。
      イヤホンの音もかき消す蝉の声     拙作
 今日のお召し物は御園座公演と同じ黒い地にこぶしの花をあしらったシックな雰囲気の振袖だった。舞台のご挨拶にもいまだ東北の被災者への心遣いが見られた。今朝、早朝も関東では大きな余震に見舞われたという。
 以後の洋装も見慣れたもの。後半では黄色の地の派手な色合いのお召し物に代わった。これで客席を回り、握手してファンサービスで愛嬌を振りまく。汗だくという感じ。白いハンカチを手にして汗を拭いていた。身近に見た感じではUチューブで見るよりはずっと細身に見えた。ご当人もそのことを気にしていて笑いを誘っていたのが微笑ましい。
      汗を拭くげにハンケチの白さかな      拙作 
 プログラムは当然のように恩師・星野哲郎のえん歌を中心に組まれた。昨年11月15日の他界がいまだに癒えないと告白された。まるで空気のようにずっと居られて当然という気がしていたそうだ。13歳から39歳まで過ごしてきたのだから当然だろう。
 「出世坂」「海鳴りの詩」「海で一生終わりたかった」小椋佳の「歌路遥かに」など。カバーでは美空ひばりの歌、星野哲郎作詞、船村徹作曲の名曲「みだれ髪」が素敵だった。ライブで聴くのは初。老成した星野えん歌の世界を余すところ無く開陳された。亜矢ちゃんの歌も言葉も求道者的に感じるのは星野師の影響が大き過ぎるのだろう。
 求道的といえば「海鳴りの詩」は星野哲郎作詞、船村徹作曲の重厚な作品。ストイックなまでに海一筋に生きる男やもめが賛美される。男手一つで娘を育てることを生きがいにしてきた物語性がある。
 星野&船村の若い頃の作品「なみだ舟」はヤン衆かもめの恋を歌った。絶望的なまでに過酷な仕事に生きる海の男の束の間の恋だった。恋をするから生きる希望も沸く。しかし、女に夢を持つな、とも諭したのであった。
 そんな海の男も酒断ちしてまで好きな女を口説き、結婚した。先立たれても後妻をもらわずに娘を育てた。初孫の顔を見るまでは死ねないとかつてのヤン衆かもめは生きる希望を託すのだった。
 1962年の「なみだ船」から1995年の「海鳴りの詩」は星野の海に生きる男への応援歌といえるだろう。北島から島津へユズリハのようにバトンタッチされたわけだ。
 新曲は「忠治侠客旅 」、好評のCD「悠悠 阿久悠さんに褒められたくて」のうちの「恋慕海峡」「運命」を歌われた。最後には歌謡浪曲「赤垣源蔵」で締める。髪型も新鮮なショートカット、袴姿も凛々しい。幕が降りるまで片膝をついて頭を下げたままフィナーレとなった。
 阿久さんの忌日8/1を前に今日も熱唱のうちに幕を閉じる。いつもながらライブで聴けることは醍醐味がある。
       阿久悠の歌懐かしく聴く忌なり        拙作