阿久悠著『愛すべき名歌たち』を読む2011年07月25日

 島津亜矢のCD『悠悠 阿久悠さんに褒められたくて』から興味のポイントが作詞家にまで飛び火して阿久悠のことをもっと知りたくなった。
 代表的な歌手のCDをレンタルして聴いてみる。いずれも昔よく聴いたなと思う。どちらかといえば作曲家の方が上で作詞家が下手に置かれてきたのではないか。しかし、阿久悠になると違うと思う。 
 ネットで検索して3冊アマゾンから注文しておいたら続々入荷した。片っ端から読んでみる。
『愛すべき名歌たち-私的歌謡曲史』1999.7.19 岩波新書
 いつか朝日新聞の「天声人語」子が「上を向いて歩こう」の歌が流行っている、とこの本の引用をしていた。「湖畔の宿」から「川の流れのように」まで100曲に絡んで短文を添えて解説。知っている歌は全部で70曲あった。しかし、「上海帰りのリル」などは朝日新聞の日曜版に連載中の「うたの旅人」で最近知ったのもある。
 だから私的歌謡曲史に習えばもう少し減るかも知れない。それでも50曲以上は子供時代から耳に馴染み、口ずさんできた。或いは傍観者としてああ、これが今の流行り歌と聞き流してきた。掲載されていないがペギー葉山の「南国土佐を後にして」は子供ながらもいい歌だと聞き惚れたものだ。
 著者の生まれは昭和12年(美空ひばりと同年齢でいい歌を提供できなかったことが再三出てくる)だから私とはひと回り違う。
 大きなズレはまず「虹と雪のバラード」が採り上げてない点が不満。それゆえに私的とうたっているのだろう。人によって思いいれは違う。巻頭の「湖畔の宿」でも世間のイメージでは「りんごの歌」から始るものと思っていたと指摘を受けたという。要するに阿久悠をペンに駆立てる何かインスピレーションが沸く歌なのだろう。著者への共感は多とする。
 読後感はつくづく日本人は歌が好きだなあと思う。そして山も好きな民族である。『日本百名山』も深田百名山というように私的な要素が混じる。これは仕方ない。万人を満足させるには万葉集のような編纂が必要だろう。ならば阿久さんは人麻呂級の扱いになろうか。