寒雷やびりりびりりと真夜の玻璃(はり)2010年03月07日

朝日文庫「加藤楸邨集」都塵抄から。
 北陸辺りでは真冬でも雷が鳴る、そうだ。春の雷は南アルプスで聞いたことがある。太平洋からの水蒸気が南アルプスの高い山にぶつかり上昇して冷たい空気に触れるためであろう。同じ原理で暖流である対馬海流が北上し、日本海の水蒸気が北西の季節風で高い山に吹き上がり雷が鳴るのであろう。2月の越美国境の山で聞いたことがあると山友からの報告にもあった。
 楸邨には珍しく動詞を一つも使わず、激しい雷鳴がガラス窓に響いたことを表現している。和歌的な句風の批判に答えて作られたように思える。26歳から33歳までの句集名を『寒雷』と名づけたのもひときわこの句に愛着のあったことが知れよう。俳句開眼の一句だった。