映画『はなれ瞽女おりん』鑑賞2010年01月03日

 1977年劇場公開。レンタルビデオ。久々にいい映画を観た。原作は水上勉。主演は岩下志麻、監督は篠田正浩のコンビ。小津映画ではしっかりものの女性を演じるがこの映画ではひらすら盲目の旅芸人役を渾身の演技で魅せる。当時36歳だから演技力に油が乗り切った頃か。
 北陸の日本海、流浪の旅、社会からの隔絶、純愛がテーマとなる。ロケーションが美しいので悲惨な人生を生きる物語の救いである。どこか『砂の器』(1974年松竹)に似ていなくもない。砂浜を流浪するシーンが無ければあんなにもヒットしなかっただろう。
 岩下志麻が美人女優から演技派に転換してゆく契機となったのではないか。残念なことはもう日本映画は衰退期にあったことだろう。
 おりんの映画は有馬稲子も演じたがったようようだが彼女は舞台で存在感を示したから立派。この映画を観て有馬稲子の舞台も観たいと思った。舞台はその場限りのものであるからもう観ることはできない。おりん役で膝を痛めたというほど渾身の演技だったそうだ。
 悲劇=薄幸の生涯を描くことは文学の永遠のテーマであろう。それを観て自分は何と恵まれていることか、と。