映画『みかへりの塔』鑑賞2009年09月11日

 1941年制作。戦前における松竹映画。清水宏監督。山間にある特殊児童を預かる教育施設の物語。家庭生活に馴染まず、社会生活へ入れない子供を三宅邦子扮する保母さんが愛情を注いで育てるが様々なトラブルが起きる。
 些細な顛末の説明もあるが感動するのは水不足で井戸が節水状態になり、打開策として山奥にある池から水を引くことを思いつく。予算不足から公共工事ではまかなえず、子供達が鍬、鶴嘴、スコップを持って溝を掘る工事に携わる。大人でさえ困難な仕事を子供達にも担うことで協力の意義を見出し、精神的に大きな成長を促した。
 苦難に耐える忍耐力と協調心といえば修養の映画みたいであるが清水監督は身勝手で協調姓はなかったそうだ。小津安二郎と同じ年であり、溝口健二らからは清水は天才と言わしめた。役者には演技をさせず、自然に任せたらしい。小津が一挙手一動まで指示したのに対して正反対の作風である。
 生き生きと描かれた子供達の映像が素晴らしい。『小島の春』(1938)でも瀬戸内海の小島に住む子供達が活写されているし、『二十四の瞳』(1954)も同じであるが大人が主役であった。ここでは主役級の笠智衆、三宅邦子らが脇に回る感じ。小津映画以外で笠さんが主役を演じるのも意外。

    モノクロの映画に更ける夜長かな     拙作

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