北海道の山の遭難事故の反省点2009年07月25日

 トムラウシ山周辺で起きた10名もの山岳遭難の報道も沈静化してきた。落ち着いて考えると全員が遭難死したわけではない。生死を分けたものは何だったのか。
 概要はトムラウシ山のパーティーはアミューズトラベルを通じて参加した男性5人、女性10人と、男性ガイド3人の計18人。年齢は32~70歳。客15人は愛知県5人、広島県4人、静岡県2人のほか、宮城、岐阜、岡山、山口の各県から1人ずつ参加。内5人が自力下山。女性7名、男性1名が死亡。

 ①雨具の下にフリースを着込むなどして風と寒さに自ら対応した。
 ②リーダーが当事者能力を失ったことを知ってパーティーから離脱し、自力下山を強行した。
 ③死亡した人は若いリーダーを信じてついて行ったが体力が続かず凍死した。

 登山では「自己責任」がよく言われる。山での事故と弁当は自分持ちというわけだ。山岳会でも入会時に誓約書を書かせるなどで対応している所もある。
 今回でも旅行の形をとるが自分の生命を賭して行く山旅では自己責任が再確認されるだろう。幼い子供を引率する学校登山ではこうは言って居れないので学校にすべての責任が課される。その結果今や学校登山は姿を消したのではないか。
 ツアー会社を利用するに当ってもコース研究、自分の体力に合うかどうか、適切な装備のチエック、気象判断などは必要である。厳しいがお客様として甘えは許されない。A社でガイドを務めたことがある仲間の話では必要な水さえ持参しないお客が居るようだ。そんな不心得なお客のために余分な水も持参するのがガイドの実態のようだ。またある仲間はお客として焼岳に参加したが雨でも登らされたそうである。
 ある意味で山岳会より厳しく、きつい、危険なのがツアー登山であろう。その背景にはもちろん一つでも多く百名山を踏破したいという思いが強くある。大多数のお客が望むなら雨でも強行登山するのだ。
 だから体力といっても晴れた日にコースを標準時間で踏破できるレベルでなく、いざアクシデントがあればビバークにも耐えられる体力が必要であろう。それは残念ながら加齢するほどに弱くなる。登山歴何十年でも関係はない。自分を知って山を知って危険を回避する知恵こそベテラン登山者のありようだろう。
 今回の事態を観察すると山の危険を知らずに参加するお客と百名山ブームに便乗するツアー会社の弱点も浮ぶ。もっとガイドに権限を持たせること、お客への登山教育も必要と感じた。
 以前から感じたことはこのような百名山踏破の目標を持った登山は依然として危ないことであった。あといくつで満願達成とか、あといくつでもう止めるからその前に何としても、この登山が終ったら引退するとか、70歳までに登っておきたいとか過去にそんなことで死んだ友人知人が多かった。目標があると冷静になれないのである。
 ある人は至仏山だけを残して登り終えたという。こんな余裕と茶目っ気が欲しいものである。

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